スーパーチャージャーとは、ターボチャージャーと同じく「過給機」の一種で、シリンダーに強制的に空気を送り込むことでバイクの排気量以上のパワーを引き出す機構です。今回はスーパーチャージャーのメリットやターボチャージャーとの違いについて解説するとともに、スーパーチャージャーを搭載したバイクをご紹介します。
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バイクのスーパーチャージャーとは?
スーパーチャージャーは「過給機」の一種であり、シリンダーに強制的に空気を送り込むことで、バイクの排気量以上のパワーを引き出す機構です。
一般的なバイクが搭載している「自然吸気エンジン」は、大気圧とシリンダー内の圧力差(負圧)によってシリンダー内に空気を吸い込んでいます。一方、過給機を付けた「過給エンジン」は強制的に空気を圧縮することで、より密度の高い混合気をシリンダー内に送り込みます。こうして混合気の爆発力を高めることで、バイクの排気量以上のパフォーマンスを引き出すのが、スーパーチャージャーをはじめとする過給機の役割です。
ターボチャージャーとスーパーチャージャーの違い
過給機は大きく、ターボチャージャー(排気タービン式過給機)とスーパーチャージャー(機械式過給機)に分けることができます。
ターボチャージャーは、エンジンから出る排気の圧力によってタービンを回し、その回転を利用してコンプレッサーを駆動させることで混合気を圧縮します。排気の勢いによって圧力を高める仕組みなので、エンジンの回転数が上がるほど圧力も高くなり、尻上がりに加速していくのが特徴です。ターボチャージャーは車では一般的に使われている機構ですが、エンジンのレイアウトに制約があることからバイクには採用しにくいと言われています。
スーパーチャージャーも、コンプレッサーで混合気を圧縮するという考え方はターボチャージャーと同様ですが、排気の圧力を使うターボチャージャーと違い、エンジンの回転を使ってコンプレッサーを駆動させる仕組みです。厳密に言えば、エンジンのクランクシャフトの出力でベルトやチェーンを介してコンプレッサーを回転させて混合気を圧縮しています。
スーパーチャージャーの方式
スーパーチャージャーにはいくつかの方式がありますが、代表的なのは以下の3つです。
遠心式
回転する羽根車(インペラ)によって空気を圧縮する方式のスーパーチャージャーです。空気に速度エネルギーを与えるインペラ、速度エネルギーを圧力エネルギーに変えるデフューザ、デフューザから出た空気を溜めて圧力を均一化する集合管で構成されています。
ルーツ式
凹凸のある断面形状を持つ一対のローターが互いに接触しないように噛み合った状態で回転し、ハウジングとローターの凹部に取り込んだ空気を送り出す方式のスーパーチャージャーです。
リショルム式(スクリュー式)
らせん状の溝を持つ2つのローターを組み合わせ、一端からローターの間に空気を取り込み、軸方向に送りながら圧縮して他端へ送り出す方式のスーパーチャージャーです。
バイクのスーパーチャージャーのメリット
バイクのスーパーチャージャーの主なメリットが以下の3点です。
低速域でも過給できる
エンジンの回転数が低くても過給できるのは、スーパーチャージャーの大きなメリットです。スーパーチャージャーはエンジンの回転を動力源にしているため、低回転の状態でも空気を送り込むことができ、「低速域の過給不足」というターボチャージャーの課題を解消できます。
アクセルのレスポンスに優れている
スーパーチャージャーを搭載したエンジンは、アクセル操作に対する反応が良いと言われています。アクセルワークによる時間のズレが少なく、なめらかなレスポンスを実感できます。
エンジンが熱を持ちにくい
スーパーチャージャーは、排気の流れを動力源とするターボチャージャーに比べて、エンジンが熱を持ちにくいと言われています。エンジンにかかる負荷が少ないのもスーパーチャージャーのメリットの一つでしょう。
バイクのスーパーチャージャーのデメリット
バイクのスーパーチャージャーのデメリットと言われるのが以下の点です。
燃費が下がることがある
スーパーチャージャーは、エンジンの回転力を利用してコンプレッサーを駆動させるため、ターボチャージャーに比べると燃費が下がりやすいと言われています。
高回転域ではパフォーマンスが低下する
スーパーチャージャーは、どちらかと言えば低回転域や中回転域でパフォーマンスを発揮する機構です。逆に、高回転域ではパフォーマンスが低下する傾向にあります。
スーパーチャージャーを搭載したバイク
スーパーチャージャーを搭載している代表的なバイクが、KAWASAKIの「Ninja H2/H2R」です。
Ninja H2 CARBON
Ninja H2 CARBONは「全てを超える」というコンセプトをもとに、最大出力170kW(231PS)を発揮するスーパーチャージドエンジンを搭載しています。エンジンとともに開発した完全自社製のスーパーチャージャーにより、どの回転域からでも強烈に加速する圧倒的なパワーを発揮します。
- ・総排気量:998cm3
- ・最高出力:170kW(231PS)/11,500rpm
ラムエア加圧時:178kW(242PS)/11,500rpm - ・最大トルク:141N・m(14.4kgf・m)/11,000rpm
Ninja H2R
Ninja H2Rは、スーパーチャージャーを搭載したNinja H2のクローズドコース専用バージョンです。
- ・総排気量:998cm3
- ・最高出力:228kW(310PS)/14,000rpm
ラムエア加圧時:240kW(326PS)/14,000rpm - ・最大トルク:165N・m(16.8kgf・m)/12,500rpm
まとめ
スーパーチャージャーを搭載したバイクのメリットは、低速域でもエンジンのパフォーマンスが発揮されることや、アクセルのレスポンスに優れていることです。スーパーチャージャーはエンジンのレイアウトに制約があることやコストの問題などにより、搭載しているバイクは少ないのが現状です。一般車両として普及するには高いハードルがありますが、Ninja H2/H2Rのようなフラッグシップモデルであれば、今後も搭載される可能性はあるでしょう。
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