昨今、バイク業界では電動バイクの開発が急ピッチで進められていますが、この背景には「脱炭素」という世界的な潮流があります。 しかし、「なぜ脱炭素が必要なのか?」「なぜ電動バイクなのか?」ということを明確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。 そこで今回から3回にわたって、車やバイクのEV化の背景にある「脱炭素」について掘り下げていきます。1回目は、今、脱炭素が叫ばれる理由や、日本における脱炭素の方針・取り組みについて解説していきます。
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そもそも「脱炭素」とは?
脱炭素とは、地球温暖化の原因となる代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量をゼロにするための取り組みのことで、「カーボンニュートラル」とも呼ばれます。
温室効果ガスの排出量を抑制し、排出された二酸化炭素を回収することで、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「脱炭素社会」を目指すことが、世界的にも大きなテーマになっています。 日本政府も2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す「2050年カーボンニュートラル宣言」をしています。
脱炭素に取り組まないとどうなるの?
近年、世界的に脱炭素が叫ばれている理由は、地球温暖化を食い止めるためです。 世界の平均気温は2017年時点で、工業化以前(1850~1900年)と比べ約1℃上昇しており、このままの状況が続くと、さらに気温が上昇していくことが予測されています。
地球温暖化が進んだ未来のことをいまいち想像できないという方もいるでしょう。「冬が暖かくなるから良いのでは?」と考える方もいるかもしれません。 しかし、気温上昇がもたらす影響は私たちが考える以上に深刻なもので、かつ広範囲に及びます。気温上昇によって自然界のバランスが崩れることで、具体的には以下のようなリスクが高まると考えられています。
嵐の被害の増大
気温の上昇によって蒸発する水分が増加するため、より激しい降雨や洪水が起こったり、破壊的な嵐が発生したりする原因になります。 サイクロン、ハリケーン、台風は、海面の温水によって勢いを増します。このような嵐はしばしば家屋やコミュニティを破壊し、大勢の死者を出したり莫大な経済的損失をもたらしたりします。
干ばつの増加
気温の上昇によって水資源が不足する地域が増え、農地の干ばつリスクが高まります。砂漠が拡大し、農作物を栽培できる土地が減少します。また、干ばつによって破壊的な砂嵐が引き起こされる可能性も高くなります。
海の温暖化と海面の上昇
海が温暖化すると海水の体積が増加したり、氷床が溶かされたりします。 これによって海面が上昇し、沿岸地域や島のコミュニティが脅かされます。 また、海には大気中の二酸化炭素を吸収する働きがありますが、海中の二酸化炭素が増えると海の酸性化が進み、海洋生物やサンゴ礁が危険にさらされます。
生物種の喪失
気候変動によって、陸と海の生物種の生存が脅かされます。100万種の生物が今後数十年以内に絶滅する危機に瀕しています。 一部の生物種は別の場所に移住して生き延びることができますが、それができず絶滅してしまう生物種もいます。
食料不足
気候変動は、世界的に飢餓や栄養不足が増加している理由の一つです。気温の上昇によって、漁業、農業、牧畜が破壊されたり、生産高が低下したりする可能性があります。 海の酸性化が進むことで、数十億の人々に食料を供給している海洋資源が危険にさらされます。また、熱ストレスは、放牧のための水と牧草地を減少させ、生産高の低下を招きます。
健康リスクの増大
気象パターンの変化によって、マラリアなどの疾病が拡大しています。異常気象によって疾病や死亡が増加すると、医療制度の維持が困難になります。 その他、人々が十分な食物を作ったり見つけたりできない場所では飢餓や栄養不足が増加するおそれがあります。
日本におけるカーボンニュートラルの方針・取り組み
2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするため、日本政府はその中間目標として、「2030年度における温室効果ガスの削減目標を2013年度に比べて46%削減すること」を目指すと表明しました。
2021年6月には、第3回国・地方脱炭素実現会議が開催され、「地域脱炭素ロードマップ」が決定しました。 脱炭素の取り組みは、地域課題の解決、そして地域の魅力と質の向上につながる地方創生に貢献できるものであり、ロードマップでは、地域のすべての人が主役となり、今から脱炭素へ「移行」していくための対策・施策がまとめられています。
また、脱炭素に向けて「地方自治体・事業者が何をすべきか?できるのか?」を示すため、以下のとおり、全国で取り組むことが望ましい「脱炭素の基盤となる8つの重点対策」を提示しています。
①屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
②地域共生・地域裨益型再エネの立地
③公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
④住宅・建築物の省エネ性能等の向上
⑤ゼロカーボン・ドライブ(再エネ×EV/PHEV/FCV)
⑥資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
⑦コンパクト・プラス・ネットワーク等による脱炭素型まちづくり
⑧食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立
この8つの重点対策のなかでも、ライダーのみなさまにとって身近なテーマになるのが⑤の「ゼロカーボン・ドライブ」でしょう。
ゼロカーボン・ドライブ(再エネ×EV/PHEV/FCV)
従来の自動車はガソリンを燃焼させて走るため、多くの二酸化炭素が発生します。自動車の台数や走行量が増えるほど、温室効果ガスの排出量も多くなり、地球温暖化を加速させてしまいます。
家庭における二酸化炭素の排出量の約3割を占めているのが、自家用自動車から排出される二酸化炭素です。 また、日本全体の二酸化炭素の排出量の約2割を占めているのが、自動車などによる運輸から排出される二酸化炭素となっています。カーボンニュートラルを実現するためには、自動車の脱炭素化は必須であるということです。
そのために急ピッチで開発が進められているのが、再生可能エネルギーで発電した電気などを使って走行する「電気自動車(EV)」「プラグインハイブリッドト車(PHEV)」「燃料電池自動車(FCV)」などです。 EVやPHEV、FCVなら、発電時・走行時ともに二酸化炭素の排出量ゼロのドライブを実現できます。これが、いわゆる「ゼロカーボン・ドライブ(ゼロドラ)」です。
現在、環境省では、再生可能エネルギー100%電力の使用を要件に、EVやPHEV、FCVを購入する個人や地方自治体、中小企業に補助金を支給するなどして、ゼロカーボン・ドライブを推進しています。
まとめ
脱炭素とはどんな概念で、「なぜ脱炭素に取り組むべきなのか?」が理解できたでしょうか。 今回は、脱炭素の概要と日本における方針・取り組みについてご説明してきました。 第2回では、「車と脱炭素」にフォーカスして、自動車メーカーの取り組みや今後の動向について解説していきます。また、第3回では「バイクと脱炭素」に焦点を当てて、バイクメーカーの取り組みや今後の動向について解説していきます。
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