バイクのブレーキキャリパーは定期的な清掃・メンテナンスが必要です。適切なメンテナンスをしないまま走っていると、ブレーキパッドが偏摩耗したり、常に軽くブレーキがかかった状態になる「引きずり」を起こしたりすることがあります。今回は、ブレーキキャリパーの仕組みのほか、清掃・メンテナンスの方法や注意点などについて解説していきます。
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バイクのブレーキキャリパーの役割・仕組み
ディスクブレーキのバイクは、ブレーキパッドがディスクローターに押し付けられることで摩擦が生まれ、ブレーキがきく仕組みになっています。ブレーキキャリパーは、ブレーキパッドをディスクローターに押し付ける役割を持つパーツです。ブレーキがきく仕組みを順序立てて見ると、以下のようになります。
- → ブレーキを握る・踏むことで、ブレーキフルードに圧がかかる。
- → 油圧によってブレーキキャリパー内のピストンが押し出される。
- → ピストンがブレーキパッドをディスクローターに押し付ける。
- → 発生する摩擦によってタイヤの回転が止まり、バイクが減速・停止する。
ブレーキキャリパーは2種類
ブレーキキャリパーは、大きく「フローティング型」と「対向ピストン型」の2種類に分類されます。
フローティング型のブレーキキャリパーは、片側だけにピストンを備えており、「片押し型」とも呼ばれます。部品点数が少なく、軽量でコンパクトなのが特徴です。
対向ピストン型のブレーキキャリパーは、両側にピストンを備えており、向かい合った一対のピストンに油圧を加えて両側からディスクローターを挟み込むことで制動力を発揮します。レスポンスに優れ、強く安定した制動力を発揮できるのが特徴です。
ブレーキキャリパーに汚れが溜まったまま走行していると、ブレーキパッドの偏摩耗や、常に軽くブレーキがかかった状態になる「引きずり」を起こすことがあります。トラブルを未然に防ぐためには、ブレーキキャリパーを定期的に清掃・メンテナンスすることが重要です。
ブレーキキャリパーの清掃・メンテナンス方法
一般的なブレーキキャリパーの清掃・メンテナンスの方法についてご説明します。
①ブレーキキャリパーをバイクから外す
マウントボルトを外し、ブレーキキャリパーをバイクから取り外します。外れにくいときは、プラスチックハンマーでブレーキキャリパーを軽く叩くと外れやすくなります。ブレーキホースはつないだ状態のままで問題ありません。
②ブレーキキャリパーを分解する
取り外したブレーキキャリパーを分解していきます。パッドピン、パッドスプリングを外したら、ブレーキパッドが取れるはずです。このとき、ブレーキパットの摩耗度合いをチェックするようにしましょう。ブレーキパッドが摩耗していたら交換が必要です。
▼ブレーキパッドの交換について
ブレーキパッドの交換時期は走行距離で5,000km~10,000kmが目安になりますが、様々な条件によって摩耗度合いは変わってきます。走行距離だけで判断せず、定期的に目視でブレーキパッドの減りを確認しておくことが重要です。新品のブレーキパッドは10mm程度の厚みがありますが、厚みが3mmくらいになっていたら交換のタイミングです。
③ピストンを露出させる
ブレーキキャリパーを分解するとピストンが見えるようになります。ただ、ピストンのすべてが露出している状態ではないので、ブレーキレバーを2~3回握って、できるだけピストンを露出させましょう。このとき、ブレーキレバーを何度も握るとピストンが飛び出して外れてしまうので、外れない程度に露出させるのがポイントです。
④ブレーキキャリパーを清掃する
ピストンを中心に、ブレーキキャリパーの汚れを落としていきます。パーツクリーナーを使っても構いませんが、ゴムを侵さないタイプの製品にしてください。専用のクリーナーではなく、台所用の中性洗剤で洗浄するのも効果的です。
ブラッシングは、歯ブラシやナイロンブラシなど樹脂素材のやわらかいブラシを使います。金属製のワイヤーブラシはメッキを傷付けてしまうので避けましょう。ブラシが入りにくい箇所の汚れは、小さく切ったウエスなどを使って落とすのがおすすめです。
⑤水分を除去する
ブレーキキャリパーの汚れを落としたら、エアーやウエスを使って水分を除去します。水分が残っていると錆びが発生してしまい、オーバーホールが必要になる場合があります。
⑥グリスアップする
ブレーキキャリパーのグリスアップをおこないます。ピストンにはラバーグリスを塗りましょう。ピストンはゴム製のピストンシールでブレーキフルードが漏れないように密閉されているため、ゴムを変質させるおそれのあるグリスを使うのは避けてください。ラバーグリスのほか、シリコングリスもゴムを傷めないので、シリコングリスでも構いません。
ブレーキパッドの裏にはパッドグリスを塗りましょう。ブレーキパッドの裏が錆びるとピストンも錆びてしまうので、それを防ぐためにもグリスアップは重要ですし、ブレーキの鳴き防止にも効果的です。ブレーキパッドを固定するパッドピン、パッドスプリングもパッドグリスを薄く塗っておきましょう。
⑦ブレーキキャリパーを組み直す
ブレーキキャリパーを分解したときと逆の手順で、ブレーキパッド、パッドスプリング、パッドピンを戻していきます。
⑧ブレーキキャリパーをバイクに戻す
ブレーキキャリパーをバイクに戻します。キャリパー本体のマウントボルトは必ず既定トルクで締めてください。
⑨ブレーキの動作確認をする
最後に、何度かブレーキレバーを引いてブレーキがきくかどうか確認しましょう。問題がなければ、ブレーキキャリパーの清掃・メンテナンスは終了です。
ブレーキキャリパーのオーバーホール
ブレーキキャリパーは、汚れの程度や症状によっては清掃ではなくオーバーホールが必要になることがあります。オーバーホールが必要になるのは、以下のような場合です。
- パッドの「引きずり」がある場合
- ブレーキタッチが悪化している場合
- ピストン周辺が錆びている場合
- ブレーキフルードが漏れている場合 など
ブレーキキャリパーのオーバーホールは専門性の高い作業なので、バイクショップに依頼するのが良いでしょう。オーバーホールの費用はブレーキキャリパーの種類などによって変わってきますが、5,000円~20,000円くらいが目安になります。
まとめ
ブレーキキャリパーは、バイクの制動性能やブレーキタッチに影響を与える重要なパーツです。定期的に清掃・メンテナンスをして、良いコンディションを保つようにしてください。
ブレーキキャリパーの清掃に限らず、バイクのメンテナンスは屋内のスペースで落ち着いて取り組みたいものです。じっくりとメンテナンスができる場所をお探しの方は、ぜひアイドゥのバイクパーキングをご利用ください。アイドゥのバイクパーキングはすべて屋内型で、一つひとつの区画にゆったりとしたスペースがあります。共用の工具類や電気、水道も使えるので、たとえば、バケツに水をくんで中性洗剤でブレーキキャリパーを洗浄するといった作業も効率的にできます。
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